世界名画セレクションに間違いなく選出される作品がある。
その名もボディーガード。言わずもがなの名作中の名作。ケビン・コスナー、ホイットニー・ヒューストン主演の、映画好きでなくとも一度は見たことがあるかもしれない、あのボディーガードである。
映画もさることながら、「えんだーいやーいやー」という名曲が頭を離れない。それでもぴんと来ない方はホイットニーーヒューストンの「Always love you」をご鑑賞くだされ。映画というより、この曲で名作入りを果たしているといっても過言ではないぐらいのインパクトなんだから。
まだ私が右も左もわからない洟垂れ時代にこの映画を見て、なんだか分からないながらも感動したのを覚えている。
なんてったってケビンコスナーが強い。そしてそれを偉ぶらない。調子に乗っているやつをばったばったと切り倒し(そこまでじゃないか)、それでもクールに決めている。かっこいい。男とは格あるべし、そう思わせる風格が出ていた。
と若かりし日の私は思ったのでした。
時を経て。
それなりのおっさんになった私もそれなりの経験をしてきた。加えて幾多の映画を見てきてそれなりに目も肥えてきたと思う。
そんな時ボディーガードを見る機会を得る。
やはり歌はいい。ケビンコスナーはかっこいい。かつて憧れた風格は私のぷよぷよの肉体からは微塵も漂いはしないのだけど、それでも映画を見るだけで、「筋トレでもしようかな」と思わせてくれるぐらいのカッコ良さがある。
ただおっさんになった私はこの映画を純粋には楽しめない。そう致命的な欠陥を見つけてしまうのだ、、、。
さらに時は経て。
さて、それからまた数年が立ち、なんとNetflix海外ドラマシリーズにボディガードなる作品が登場する。名前は同じだけど、もちろん映画とは似て非なるもの。でもこの作品の製作陣があの名作ボディーガードを意識しなかったはずはない。なんてったって珠玉の名作なのだから。
特に前情報もなく見始める。そこまで面白いと興奮するような出だしではないものの、じわりじわり来る始まり。嫌いじゃない。ちょっと硬派な感じの主演がいい感じに睨みを利かせてる。うん、私好みのええ感じの仕上がりっぷり。舞台はイギリス・ロンドンのようで、その辺も渋みを加える要因かもしれない。
どうやら内務大臣警護をするらしい。第1話で仕事の出来る感を見せ付けて、それでいてちょっと影があったり、家庭に問題を抱えていたりなどを見せながら、今後の伏線を張っているんだろう。まぁドラマなので完璧な人間を描いたらつまらないんだけど、みんな色々あるんだ。
そして事件はおきる
事件と言っても、爆発だ、殺人だ、そんなものは映画では事件とは呼ばない。
シリーズ1第2話。つまりまだ序盤も序盤。
もう描写するのも面倒なんで端的に述べさせてもらえれば、このボディーガード(男)と要人である内務省大臣(女)がやっちまう。出来ちまうのである。あぁぁぁ。
消した。
その場でNetflixを落とした。私の記憶からも抹消した。なぜ?なぜなんだ??
そう実はその珠玉の名作初代?ボディーガードも、雇用主と雇用者の関係を超えてやっちまうのである。これが私がこのボディーガードをあまり好きになれない理由である。何もラブシーンが嫌だとか、そんなことをいっているんじゃない。
あれだけ硬派に、強靭で、渋い男を描いているのに。何より仕事には人一倍並々ならぬプライドを持っているのに。普通その依頼主とやっちまえるのか?まだ映画版は多少なりともその辺の描写が描かれているし、依頼主は歌姫でまぁ血気盛んではあるし、百歩、千歩譲っていいとしてだ、このNetflix版ボディーガードの警護対象は一国の大臣ですよ。そりゃまぁ一応それなりには綺麗な方だけどね。普通やらんでしょ。
要人も要人だ。いくら襲われて動揺して、ドキドキしていたからって、つり橋効果がはなはだしい。どんだけときめいているんだ。そんなに出会いがないのか。 仕事しろ。
安易な恋愛どたばたコメディに警笛を鳴らす
私は憤っている。
何でもかんでも隙あらば男女のあれやこれやを入れて話を無理に複雑にしようとする。
もっと真っ向から作品を作ることはできないのか。
まずボディーガードのキャラ設定が甘すぎるんじゃないのか。世間の、硬派で、確固たる信念に突き動かさる、強く、逞しいボディーガード像はどこへ行ってしまったんだ。
彼らはもう軟派で女好きのタダの筋肉マッチョマンに成り下がってしまったよ。
まぁ第2話以降見ていないので、もし本当にそこから面白くなるんだったら、どなたか教えてください。
とりあえずラブロマンスをみたくて、「ボディーガード」を見る人はいないとだけお伝えしておきます。
あっちの方もちゃんとガードしろよ。