世の中には色々な人がいる。
おじさんにだって色々なおじさんが居る。
先日は香り立つおっさんを発見したのだが、今回はまた新たなおっさんを見つけたのでご報告したい。
すみっこおじさんとの出会い
これもやはり朝の通勤電車。
これが通勤混雑とかわさわさしている時間だとよく観察もできないのだが、私の使うのは朝5時台。もちろんこのすみっこおじさんが現れるのは私の利用する朝5時台の電車。
始めは単なるくたびれたおっさんぐらいにしか思っていなかった。しかもそのくたびれ方が尋常じゃなくて、くたびれおじさんでも通用するぐらいの突き抜けっぷりである。
非常に表現が難しいのだけど、髪はぺったりとしながらにして、くしゃっとなっていて、ふくはダボっとしつつも、ヨレっとしている。顔の感じもぬぼーっとしながらも、眉毛が太く垂れ下がり、いい感じにくったりである。
しかし人は見かけにはよらない。
恐らく以前から居て、なんとなく視界には入っていたんだけど、特に気に留めるでもなかった。
それがある日、思いもよらない速さで駆け出したのである。朝の、人もまばらな車内で、である。その”ぬぼー”っとした風貌からは似つかわしくない俊敏な動き、獲物を捕らえるような鋭い眼光。あんなにいい人だったのに。通勤電車は人を変えてしまうんだ。
そう、すみっこおじさんは、すみっこがないと生きられない、そういう生き物だったのです。
電車のすみっこのビジネスクラスっぷり
すみっこってのはあれですよ、横7人がけとかのすみっこのあれです。
電車に乗るものなら誰しもが憧れてやまないこのすみっこポジション。まず片側に人がこないので通常両側から掛かるプレッシャーの半分。さらにその壁に寄りかかることで睡眠を貪ることができる。通勤、通学で電車を使うものにとっては垂涎の的。それがすみっこ。
私もなんならこのすみっこおじさんを観察しているときにはすみっこに座っている。つまり見方を変えれば私もすみっこおじさん。斜め前にはすみっこおばさんとかもいて、みんなやっぱりすみっこ大好き。
もちろん席はすみっこから埋まっていく。まるでオセロのせめぎ合いの様に。そしてすみっこに座るものはいつ隣のすみっこが空くかを虎視眈々と狙っている。
ここまで来ると、このすみっこを別料金で売りに出してもいいんじゃないかと思えてくる。
つまりすみっこのビジネスクラス化である。ファーストクラスでないところがまたすみっこ心をくすぐる。
もちろんビジネスクラス。優先搭乗もある。後から来たはずなのに何故か一般乗客よりも先に車内に入ることが出来る。うむ。
車内に入ると颯爽とすみっこに腰を下ろす。うむ。
おもむろにPCを広げ本日の会議資料に目を移す。うむ。
あぁ欲しい。そんなパスがあるなら是非とも。
閑話休題(最近脱線しがちだ)
すみっこおじさんの特性
すみっこじゃないと本当に嫌らしい。
むしろ普通に混雑しているときはどうしているんだろうか気になるレベル。だってすみっこ近くに見つからないと、少し離れたところに駆け出す。それはもう凄い勢いで。
でもそこには隣のドアから普通に入った人が何の気なしにそのすみっこに座ろうとしている。だって誰もが憧れるすみっこポジションがそこにはあるわけで。突進してくるすみっこおじさんに驚いて身を引いている。
不思議すぎる。
もっと不思議なのは、実はすみっこは空いているわけですよ。もうちょっと歩くと。しかも見えている。特にこのすみっこおじさんが乗ってくる駅は降りる人も多いから、そんなに走らずともすみっこが狙える。
それなのに走る。
正直車内で走るのは辞めて欲しい。怖い。見ているこっちが怖い。
それでもすみっこおじさんは気にしない。
恋は盲目。すみっこも盲目。
すみっこおじさんは今日も走る。