また面白いAudible作品を見つけてしまった。
「だいこん」山本一力作。
すでに山本さんの書いた著作は何作品か聴いていて、じんわり良い話を書く人だな、ぐらいの印象でした。
この作品はその”じんわり”の”じんわり良い”レベルが尋常じゃない。もう少し具体的にそのよさを書きたいのだけど、私の稚拙な読解力と表現力じゃただただ良いとしか書けないような、、、それでも書きます。
ちなみに最近Audibleがコイン制になっております。お気をつけて。
「だいこん」の料理は現代でも通じる
”だいこん”っていうのは、この話の主人公椿(つばき)の仕切る一膳飯屋(現代風に言えばレストラン、、、っていうか食堂?)の屋号。
椿は子供のころから飯炊きが大人顔負けの上手さで、貧乏長屋に生まれ、色々と苦労するものの紆余曲折ありながらも17,8にして自分の店を構えるまでに至る。
そんで、まぁこの椿坊(江戸時代では子供のことを”坊”を付けて呼ぶらしい)飯炊きだけではなくて、商売の才にも長けているわけ。
ただ商売といってしまうともったいないのだけど、誠実にお客さんの要望に応えながらも、横暴なお客さんの要望はきっちり断る。現代にはびこる「お客様は神様」みたいにモンスターカスタマーをそのままにしておくことがない。
商売の基本はやっぱり飲食業
やはり飲食業っていいなって思う。基本って言うか、単に参入しやすいってのもあるけど、材料買って、料理して、提供するという誰にも分かりやすいビジネス。
そして何よりお客さんが目の前にいる。
最近気付いたのだけど、私も直接お客さん相手の商売がしたいなーと。なんでそれをしていないって、給料が安いからなんだけど、そんなこといって人生をつまらなく過したらそれこそ意味がない。
それを本業ではなくても、手伝いでも、バイトでもいつかはやってやろうと妻には隠れて思っています。
江戸時代の就職事情
他にも江戸自体関連の小説とかを好きでよく読むんだけども、商売と生活の距離が近いのだなと思う。
江戸時代にも大体みんな自分は○○屋とか大工みたいに専業があるにはあるのだけど、内職とか、何らかの副業をしていることが多いような気がする。そして職業ではなくても、自分で出来ることはやるという当たり前のマインド。
ただ現在の大企業みたいに誰もが知る商店みたいのはあって、そこに雇われるいわゆるサラリーマン的に奉公している人達もいるのがまた面白かったりもする。
そしてそこで頑張ると番頭(雇われ店長みたいなもんかな)とか、運がいいと店自体をもらえたり。
いつの時代も悩みは同じ。でも江戸時代の方が必死。
この作品の中では真摯に良い物を届けようとする椿坊と、それを助ける人達がたくさん出てくる。もちろんそこにひがみや、やっかみで突っかかる人も多数いるのだけど、良い物をきちんと提供しているだけで、味方のほうが増えていく。
そんな構図をみていると、結局現代も、江戸時代も同じ事で悩んで苦しんで、同じように楽しんでいる。
ただ江戸時代のほうがちょっと大らかで、いい加減で、生と死の距離が近い。
なんか現代ってお金出せば大抵のことは出来るし、それでそれなりの満足も得られるんだけど、それだとヒリヒリ感がない。生きてる感というか。
最後に
どんなに新しい技術が出来ても、人間なんて早々変わるもんじゃない。100年もしたら、またちょんまげ姿に戻っているかもしれないし、もしかしたら服の代わりに何か得たいの知れないモノを身にまとっているかもしれない。
そんな未来を見たいのでせいぜい長生きして、「昔はTシャツってモノがあってねー」なんてのを曾孫ぐらいに聞かせてやりたい。
わっしょい